霊能系の電話占いで今、最も人気が高いのは、本物のイタコが霊を降ろして悩みを解決するという触れ込みの『イタコ鑑定』です。イタコというと、盲目の老女霊媒が亡者の霊を降ろして何やら不気味な宣託を下すというおどろおどろしいイメージがつきまといますが、このイタコの術(口寄せと呪術)を習得した霊能者による鑑定が若い女性を中心に根強い人気を得ているというのです。この辺の事情について実際にイタコ霊能者として電話鑑定業務に携わっているO社の霊能者の先生に話を伺いました。
Q. 本当にイタコが電話で相談に乗ってくれるのですか?
A. 東北の陸奥地方に在住している本物のイタコというのは高齢化が進んでいて、そうした人たちが電話鑑定をするわけではありません。実際にお客様を鑑定するのは、彼らから直伝でイタコの技術を学んだ比較的若い霊能者です。私の場合は知り合いのツテで青森市内に住んでいる有名なイタコカミサマと出会うことができまして、その師匠の下で二年近く住み込み修行し、無事に免許皆伝を得ました。イタコ霊能者と名乗っている先生の多くは似たような道を辿ってきていると思います。ただ最近は電話占いのイタコブームに便乗して、正式な修行を経ていない人までイタコ鑑定という名目で普通の霊能鑑定をしているようですが……。まあ、イタコ鑑定の電話占いってかなり乱立状態ですからね。本物を見分けるのはちょっと難しいかもしれません。私が知っている限りで本物のイタコ霊能者が在籍しているのは、A社さん、M鑑定所さんなどです。
Q. 鑑定では電話越しに口寄せ(霊を我が身に憑依させて、客と直接会話させるイタコ独自の霊媒術)をするわけですよね。実際にはどんな感じなのですか?
A. 常に口寄せするというわけではないです。普通の霊能鑑定のように霊視をしてアドバイスをしておしまい、ということもありますよ。口寄せをするのはお客様からリクエストがあったときだけです。まあ、大抵のお客様がそれをリクエストするのですが。なにしろイタコ鑑定ですから(笑)。やり方はイタコの作法に忠実に従って精神を集中し、目的の霊を私自身の身に降ろします。そして、私の口を通してお客様と会話してもらうという感じです。口寄せをしている間はトランス状態に陥っているので私の記憶や意識は少し曖昧になりますが、意識を完全に失うということはなくて、霊とお客様の会話の内容を第三者の立場からできるだけ把握するように努めています。そうしないと、電話鑑定としては不備な部分が出てきてしまいますから。あと、本場のイタコの口寄せですと、霊とお客様の会話の際に、急に声質やしゃべり方が変化するということがありますが、あれはあくまで演出のひとつでして、私の場合はそういった大仰なことはしません。というかできませんね。霊と会話してもらって色々な事実関係が一致していれば、お客様は本物の霊が降りてきていると納得してくれますし。
Q. どのような霊を降ろすことが多いですか?
A. 一応、亡くなった方も生きている方の生き霊も自由に降ろすことができますが、実際には亡くなった方の霊を降ろして欲しいというリクエストは少ないです。やはり電話占いは女性の恋愛の悩みが圧倒的多数ですから、片想いの相手や恋人、旦那さんなどの生き霊を降ろすことが多いですね。憧れの男性と話がしてみたいとか、片想いの彼が自分をどう思っているのかが知りたいとか、そういう目的で口寄せをリクエストされるわけです。求めている本人の生き霊と直接会話できたということで、それだけで満足される方もけっこういらっしゃいますよ。また口寄せを終えた後にはイタコ独自の呪術を施して、恋愛成就や結婚成就をサポートさせていただいています。
Q. どうして急にイタコの鑑定に人気が集まってきたのでしょうか?
A. お言葉を否定するようですが、急にブームになったという感覚はないですね。電話のイタコ鑑定というのは実はもう十年以上前からあって、当時もそれなりの人気を集めていたんですよ。その後、何社かイタコ霊能者を集めた電話占いサービスが立ち上がって、それが徐々に浸透してきたという感じではないでしょうか。最初に始めたのはT社という電話占い会社だと記憶しています。あそこには私の知り合いの霊能者も何人か在籍しているのである程度の内情を聞いているのですが、本部が青森のむつ市にあって、現役の老イタコとのネットワークもきちんとしているそうです。あそこで鑑定している先生たちは全員、正式なイタコの修行を修めた人ばかりで実力も高いですよ。それからイタコのブームが起きた理由ですけれど、個人的に推測するにテレビや本で誰でも一度は見聞きしたことかあるイタコの口寄せを電話一本で簡単に体験できるという点が一般に受けたのだと思います。このブームがいつまで続くのか分かりませんが、私自身はあくまでイタコの霊術を継承する立場なので、今後もマイペースで活動していくつもりです。